福岡で開催された第21回国際高血圧会議で、世界レベルでの高血圧制圧への取組みに向けて、「福岡宣言」が発信された。
高血圧治療ガイドラインでは、血圧を130/85mmHg以下に下げることが重要とされているが、日本国内の現状では、高血圧治療を行っていても降圧目標を達成できている患者は32.9%と少なく、未治療の患者も多い。この状況は日本のみならず世界も同様で、世界の重要課題となっている。
発表された「福岡宣言”Hypertension Fukuoka Statement 2006」では、高血圧制圧の重要性を訴えると共に、全世界が共通で取り組んでいくべき課題が盛り込まれた。
「福岡宣言」の内容は次の通り。
・脳卒中や心臓発作などの心血管疾患は、世界の全死因の約30%を占めており、その割合は癌や感染症よりも高い。また、WHOがカバーしている範囲では、脳卒中の62%および心臓発作の49%が高血圧によるものである。
・高血圧症の患者数は全世界で9億7200万人と推定されている。これは成人の26.4%に相当する。内訳は、先進国が3億3300万人、発展途上国が6億3900万人である。このことは、先進国ばかりでなく発展途上国においても、高血圧症の管理が重大な問題であることを如実に示している。
・高血圧症の予防や治療に関連して、これまで主として先進工業国でさまざまな研究・調査が行われてきたが、そこで得られた知見は発展途上国にもおおよそあてはまるものである。
・血圧の上昇は、高血圧症と診断されるレベルに達していなくても、心血管病の重要な危険因子であり、人類全体が対処せねばならない根本的な問題である。加齢に伴う血圧の上昇を防ぐことがまず第一歩である。
・高血圧症の予防および治療の目的は、血圧を厳格にコントロールすることにより、心筋梗塞や脳卒中などの心血菅イベントの発生を抑制し、合併症ならびにそれによる死亡を防ぐことである。
・高血圧症であるにもかかわらず、適切な治療を受けていない人は多く、血圧コントロールに成功していない人も多いという実態を重視すべきである。
・高血圧症の治療の第一歩は非薬物療法である。禁煙、減量、減塩、運動、節酒、カリウム補充、低脂肪で野菜の多い食事を心がけ、健康的なライフスタイルを実践することは、血圧コントロールに役立つ。
・非薬物療法でコントロール不良な高血圧症に対しては、厳格に血圧をコントロールするために薬物による治療を積極的に行うべきである。
・上記の目的を達成するため、各国の政府および医療従事者は、広く人々に対して、高血圧についての正しい情報を提供すると同時に、人々が適切な医療サービスにアクセスできるよう努めるべきである。
この宣言は高血圧制圧のための世界的戦略の第一歩である。