日本病院薬剤師会は各領域で専門薬剤師制度の導入を進めているが、癌領域の認定制度は指導的立場の「がん専門薬剤師」と実務者である「がん薬物療法研修認定薬剤師」(仮称)の2本立てに整理し、癌薬物療法に精通した薬剤師の裾野を広げていく方針だ。また、年度内に癌薬物療法に精通した薬剤師を全部で300人養成することとした。
日病薬は厚生労働省の補助金により、「がん専門薬剤師研修事業」を進めている。しかし、研修場所の確保、3カ月間にわたる研修期間、「がん専門薬剤師」としての論文作成など、要件・ハードルの高さもあって、認定施設における研修は60人強にとどまり、「年間300人、5年間で1500人養成」という当初目標には、遠く及ばないことが明らか。
そこで、執行部では癌薬物療法に精通した「がん薬物療法研修認定薬剤師」を養成し、がん専門薬剤師へのステップアップを目指すことにした。癌の薬物療法に詳しい薬剤師の裾野を広げることにより、教育・指導的立場の癌専門薬剤師養成につなげようとの意向だ。
14日に開かれた第2回地方連絡協議会では、執行部の提案に対し、各県病薬の会長から研修にかかる諸経費の増加等を懸念する声も上がったが、次代の病院薬剤師育成を念頭に置いた事業だけに、概ね賛同が得られた。
がん専門薬剤師を取り巻く状況としては、厚労省が2004年度から開始した「第3次対がん10か年総合戦略」で、がん医療の均てん化を図ることを目標として具体的な施策を検討し、今年2月には「がん診療連携拠点病院の整備に関する指針」を通知した。
拠点病院は、2次医療圏の地域がん診療連携拠点病院と、都道府県がん診療連携拠点病院に整理したが、指定要件では診療従事者について、「癌薬物療法に精通した薬剤師が1人以上配置されていることが望ましい」と指摘されていた。さらに、9月にがん対策推進室から出された都道府県宛ての事務連絡では、癌薬物療法に精通した薬剤師には、日病薬が養成しているがん専門薬剤師も該当する旨が示されている。
質疑の中で執行部は、がん薬物療法研修認定薬剤師はがん専門薬剤師研修事業の一環であることから、厚労省による指定要件の「がん薬物療法に精通した薬剤師」として、理解されるよう努力するとの方針を示した。これらの要件をクリアしたがん診療連携拠点病院には、診療報酬で200点の加算が認められていることから、将来的には配置されていることが望ましいの表現を、「必要」という言葉に切り替えたい意向だ。当面、拠点病院に、がん専門薬剤師をどれだけ配置できるかが焦点になる。
◇研修施設の拡大を検討
がん薬物療法研修認定薬剤師の認定要件は、がん専門薬剤師と同様に3カ月間の実技研修が必須だが、研修施設としては今まで日病薬が認定した国立がんセンター等の中核・基幹病院だけでなく、全国の拠点42病院が、研修認定受け入れ施設の候補として挙がっている。現在、認定要件に照らして精査を進めており、今月中には結論が示される予定だ。
それ以外の要件として、「がん専門薬剤師研修事業講義研修・集中教育講座」の履修も義務づけられる。
また、研修事業に対する厚労省の予算は研修だけを対象としているため、長期にわたる宿泊費等は研修者の自己負担となる。この負担軽減措置として、日病薬は1人当たり20万円(本人負担5万円含む)の予算を計上しているが、対象者が拡大することに伴い、補正予算を編成する必要が出てきたため、臨時代議員会が開催される。
なお、集中教育講座は12月16、17の両日に東京の共立薬科大学、1月13、14の両日には大阪のYMCA国際文化センターで開催される。一般の参加者も受講可能。さらに初の「がん専門薬剤師認定試験」も、明年2月18日に東京渋谷の長井記念ホールで行われることが決まった。これに特段の受験要件はなく、一般の受験も認められる。詳細は同会ホームページもしくは事務局まで。