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「医薬品のグローバル開発及びアジア諸経済の協力」をテーマに、2006年「APEC医薬品等レギュラトリーサイエンスネットワークシンポジウム」が12、13の両日、東京日本橋蛎殻町のロイヤルパークホテルで開かれた。アジアにおける医薬品開発の現状や、規制調和のあり方などを中心に議論が進められ、規制当局の講演やパネルディスションを通じて、医薬品開発におけるアジア経済圏の重要性が再確認された。また、米国FDA副長官のマーレイ・ランプキン氏は、グローバル化が進む中で、他国との協力が必要不可欠との考えを強調。医薬品医療機器総合機構の宮島彰理事長は、日本で問題となっているドラッグ・ラグについて、「最初からグローバル開発を進めれば、ドラッグ・ラグは解消できる」とし、世界同時開発への参画が、日本にとって重要課題との認識を示した。
技術革新を協調で克服
FDA・ランプキン氏
APEC会合は、共通の問題を解決して新医薬品の規制に関する事項を相互理解するため、00年に初会合が開かれ、医薬品規制について意見交換が行われてきた。最近ではグローバル開発の一環として、アジア諸国が国際治験へ積極的に参画するなど、アジア各国の治験環境は劇的に変化している。今回はそうした状況を背景に、「グローバル開発とアジア諸国の協力」をテーマとして、各国の規制当局や産業界による発表、討論を通じて、今後の協力のあり方などについて意見交換した。
大会初日に講演したランプキン氏はFDAの考え方を紹介。グローバル化が進む一方で、医薬品をめぐっては技術革新も進んでおり、特に遺伝子を使った製品が登場するなど、ドラスチックに変化しつつある現状を指摘。各国の協力が一層重要になっているとの考えを強調した。
さらに科学技術の高度化に対して、規制当局同士が理解と協力を進めることにより、こうした学問的ハードルを越えなければならないと指摘。FDAは既に取り組みを開始しており、引き続きそうしたスタンスで、他国との協調関係を強化したいとの考えを表明した。
同時開発へ取組み促す
総合機構・宮島氏
一方、宮島氏も初日に講演し、総合機構の体制を説明。このうち承認審査の迅速化に関しては、タイムクロック(標準事務処理期間)は米国と遜色ないレベルまできているが、メーカー側の持ち時間が依然として長いため、総審査期間では米国より長くかかっていると現状を報告した。
さらに、総合機構では治験相談から審査までを同一チームが担当するなど、一貫体制で取り組んでいることを紹介すると共に、特に治験相談などのコンサルティングに力を入れ、こうした施策で審査の迅速化を図っていく方針を示した。
また、日本で大きな問題となっているドラッグ・ラグに関して宮島氏は、「メーカーから申請が出なければ、われわれは審査できない」とし、「日本企業が欧米で治験を先行させ、国内でブリッジング試験を行う方式が一般化したことが、結果的にドラッグ・ラグを生み出した。最初からグローバル開発に取り組めば、ドラッグ・ラグは解消できる」と述べ、世界同時開発を推進することの必要性をアピールした。