磯部氏 |
シンポジウム「後発医薬品使用促進と薬剤師」では、行政、医療機関、薬局、メーカー、医師それぞれの立場から、後発医薬品(GE薬)の使用促進について意見を述べた。基調講演した磯部総一郎氏(厚生労働省保険局医療課)はGE薬の使用促進を「患者・国民が強く望んでいる施策だ」と強調した上で、「どの薬局でも、患者が先発品とGE薬を普通に選択できるような医薬品提供体制を日本全国で構築すべき」との考えを示した。さらに「在宅医療への参画などに比べ、GE薬使用促進のハードルが高いとは思えない。患者が医薬分業のメリットを実感できる意味でも大きなこと」と薬剤師に積極的な対応を要請した。また、経済成長戦略大綱で2008年度までに目指す“GE薬市場シェアの大幅拡大”に対しては「拡大への強い方針を政府として決めている」とした。
GE薬の品質に対する懸念の声には、「承認基準は米国と同様で、いわば国際標準。先発品より品質・規格で劣るものは絶対に承認しない。生物学的同等性も一定の許容幅の中にあることを確認している。法的には承認審査とGMPの適用で有効性、安全性、品質は担保されている」と理解を求めた。
その一方でGEメーカーへは、▽期限付きの全規格揃え▽安定供給▽情報提供の充実――等のハードルを課しており、対応できない場合には文書で指導して公表するなど、メーカーとしての信頼を失うような厳しい措置を講じていることも紹介した。また、安定供給対策として整備した苦情処理体制については「意外に苦情が来ないが、問題があると考えた場合はぜひ言ってほしい。それがメーカーとの間に、緊張感を持たせることにつながる」とした。
さらにGE薬市場の現況にも言及。「世界最大手テバ社の売上高が約5000億円、米国では数量ベースのシェアが3位で、先発メーカーと肩を並べるほどの規模だ。そこでは品質問題の議論は起きていない。国内GEメーカーも、規模を拡大して信頼を勝ち取っていかなければ、将来の発展は難しい」と述べ、国内大手や外資の市場参入、さらにGEメーカー再編により、GE薬市場の整備に向けたプロセスが始まりつつあると見通した。
池田氏 |
また、医師の立場から発言した池田俊也氏(国際医療福祉大学薬学部)は、今年6月に神奈川県の鎌倉市、茅ヶ崎市の両薬剤師会に実施したアンケート結果を紹介した。新様式処方せん受付数4万2559枚に対し、1剤でも実際に変更されたのは1319枚(3・1%)に過ぎず、GE薬の使用促進には医師、薬剤師、患者それぞれに障壁があるとし、「この壁を乗り越えなければ、欧米並には浸透しない」との見解を示した。特に医師としては、「GE薬のある薬剤ですむ病態の患者は多い。医療経済も考えて処方を見直す必要がある」との考えを述べると共に、GE薬の銘柄指定は「面分業では混乱が起きる」と指摘した。
さらに、米国ではマネジドケア型保険が主体だが、GE薬調剤の選択に関し薬剤師に経済的インセンティブが導入されているケースがあることを紹介。「手間だけかかって、経営的に苦しくなる状況では困る。患者に負担のかからない形で、薬局に対する適正な報酬も必要だ」と訴えた。
シンポジウムの模様
品質試験等のデータ開示を
討論では会場から、後発品変更可の処方せんで調剤した場合、選択した薬剤に起因した薬害、副作用が発現した場合の責任の所在について質問が出た。これに対し磯部氏は「多くの選択肢がある中で、選択した責任は薬剤師が負う。また、製品の承認審査が間違っていれば行政、メーカーも責任が問われるという議論が行われると思う」との見解を示した。
公正取引委員会が先日発表したGE薬調査で、「使う」と考える消費者が97%いた一方、医療機関の85%が「不安がある」とし、医療現場と消費者の意識に大きな乖離があることを、どう分析するかとの質問に磯部氏は「(医療機関の不信感を払拭するために)大事なのはデータを示すこと。(GEメーカーも)厚労省が承認したから同じという説明ではなく、実際の品質試験法など企業秘密の部分もあると思うが、そういうデータを示さなければ理解されない」とし、今は詳細なデータを提示することが重要だと話した。
さらに「行政としてもGE薬承認に際してどのようなデータを要求し、どういう経過で承認されているかを分かりやすく示していきたい」とし、そのために「薬剤師をキーマンとして、処方医、国民に啓発していく方法が効果的」との考えを述べた。