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9月26日に就任した柳澤伯夫厚生労働大臣は、専門紙記者団との就任会見に臨み、今後の厚生行政の方向性などについて所見を述べた。厚労省はこれまで年金、介護、医療と相次いで改革を続けてきたが、厚労相は「なお改革が必要不可欠」との認識を明らかにすると共に、将来展望を踏まえつつ、一体的な視点で取り組む姿勢を強調した。また社会保障制度改革についても、これまで焦点になっていた費用の伸び率管理に対し、「ストレートに是認されるものではない」と、慎重な見方を示した。
厚労相はこれまで金融、財政分野を中心に政治活動を行い、また党の税制調査会長も務めてきたが、会見では「これまで外側から厚生労働行政を見てきたが、今後は当事者として課題に取り組んでいきたい。今まで経験したきたことも生かしていきたい」などと話した上で、「厚生労働行政は国民生活と非常に密着した分野」だとし、国民の安心、安全を確保するため、全力を傾注して責務を果たす考えを表明した。
特に、社会保障制度に関して厚労相は、「年金、介護、医療と立て続けに改革を行い、相当取り組んできた」と評価しながらも、依然として改革は必要だと指摘。具体的には、縦割りではなく、将来展望を踏まえながら、一体的な改革に取り組んでいきたいと語った。
一方、経済財政諮問会議が再三にわたって主張してきた医療費の伸び率管理について「ストレートに是認されるべきだとは思わない」とし、否定的な考えを示すと共に、一定額を公的保険の範囲から除外する保険免責制度についても、「なお慎重に検討する課題だ」と消極的な立場を示した。
社会保障の財源に関連しては「消費税の引き上げも必要」としながら、医療制度改革の成果や、税収の動向を睨んで行うべきと主張。また、消費税の福祉目的税化の声が上がっていることに関して厚労相は、「1つのアイデアだ」としつつも、「社会保障のどの分野に対応するのかは検討すべきだろう」とし、消費税投入の範囲が、なお検討課題になるとの見解を示した。
このほか厚労相は、医療制度改革に関しても言及。このうち、高齢者医療制度に関しては、「これから制度がスタートするという時なので、人間が人生を終える際の医療はどうするのか、有識者の中で議論をいただきたい」と述べ、終末期医療のあるべき方向性に関して、有識者会議を設置して議論を開始する考えを明らかにした。
診療報酬改定の方向性に対しては、「党の決断で過去最大のマイナス改定を行った」と、今年度の改定を振り返りつつ、「診療報酬だけでなく、地域には医師不足の問題もある。総合的な判断が必要だと思う」と述べた。
さらに、医療事故の裁判外紛争処理のあり方に関しても、産科を対象として、無過失補償制度や第三者機関の創設に向けた検討が、既に省内で動き始めていることを説明し、「基本的にそういう方向に進むのがいいと思う」と語った。