|
京都薬科大学と滋賀医科大学は26日、教育研究に関する包括協定を締結した。京都薬大の臨床薬学専攻修士課程の大学院生の臨床医学研修を、滋賀医大の医局で来年4月から実施することを骨子としたもの。病院実務研修などを終えた修士課程2年次生304人を対象に、609カ月間の研修が行われる。臨床現場に近い医局で実務研修を行うことで、医学や医療、各専門領域に通じた薬剤師の育成を推進したいという。今春から全定員を6年制に切り替えた京都薬大は、3月にも京都府立医科大学とも同様の協定を締結。医学との密接な関係の構築を進めている。
京都薬大における同修士課程では、修士課程1年次に、大学病院の薬剤部などが受け入れ先となって病院実務研修、病院臨床実務研修、保険薬局実務研修を実施。修士課程2年次には、実務研修で得たテーマをもとに主に大学内で研究に取り組むのが、これまでの体系だった。
今回の協定締結によって、修士課程2年次においても医療現場での実務研修を実施する道が新たに設けられた。既存の実習体系に比べて医療の最前線に身を置く期間が長くなる上、医局預かりとなることによって、医師の視点からも医療を学び、臨床研究に取り組めるようになる。
具体的な研修内容としては、治療計画、処方設計を学ぶほか、カンファレンスへの参画、病棟診療活動の見学、手術見学、医療チームへの参加(見学)、治験データの集計などが想定されている。
京都薬大はこのほど医局関係者を対象に説明会を開催。学内においても大学院生に通知した。希望者を募り、来春から滋賀医大に送り出す304人を、年内に決定したいという。
同日、大津市の滋賀医大キャンパスで行われた調印式終了後に記者会見した京都薬大の西野武志学長は、医療チームの一員として薬剤師が活躍する必要性が高まっているとし、「直接医局に所属し指導を受けることで、より臨場感のある教育ができる」と強調。癌や感染制御など各専門領域に通じた薬剤師も求められているとし、「今回の協定によって、専門薬剤師養成の教育もできると期待している」と語った。
滋賀医大の吉川隆一学長も「医療現場で薬剤師の参画が広がってきている。薬剤師に医学・医療のことをより熟知していただきたいという希望がある」と述べ、「包括協定を通じて、医学・医療を熟知した薬剤師が1人でも多く育って欲しい」と期待を示した。
京都薬大は約20年前から、10人以上に及ぶ非常勤講師の派遣を滋賀医大から受けるなど、両大学は長年の協力関係にある。いくつかの共同研究も個々に進行している。
今回の包括協定締結によって、大学院生の医局での研修を核にして、教育・研究連携を強化するほか、教員の交流を促進し、単位互換も検討していく。滋賀医大は04年に大阪薬科大学と特別研究学生交流協定を締結しているが、薬系大学と包括協定を結ぶのは今回が初めてという。