全国初の薬種商販売業者養成校として1976年に開校した「大阪薬業専門学校」が来年3月末をもってその歴史に幕を閉じるという。この30余年間、約2800人の卒業生を輩出してきただけに、閉校を惜しむ声も少なくない。堤民治校長は「昨春、改正薬事法の検討段階で、薬種商販売業に資格化の見通しがついたことから閉校を決断した」と話している。
6月に成立した改正薬事法に基づいて実施される新しい医薬品販売制度で、最も運用面が注目されるのが、薬剤師以外の医薬品販売専門家として創設された登録販売者だろう。薬種商販売業者からすれば、50年の悲願とも言える個人資格化が実現したとの認識であり、薬種商販売業を養成する専門学校としての役割を終えたという考え方だろう。
今回の改正は薬種商販売業者にとって、61年に施行された改正薬事法以上のインパクトがあるかもしれない。ただし61年改正では、既に店舗を営んでいた業者には、指定医薬品販売の規制を受けないという既得権が認められた。これら旧薬種商と呼称される業態が、現在も全体の1割ほどを占めている。それに対し今回の改正薬事法では、現に営業している薬種商販売業者を登録販売者と見なすことにより、旧薬種商の既得権も制限を受けることになりそうだ。
一方、登録販売者の運用をめぐっては、今月13日に医薬品販売に関連する薬業5団体で構成される薬業連絡会が設置した「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」の報告書がまとまり、詳細な考え方を打ち出した。登録販売者に関する資質認定試験のあり方から、その資質を継続して担保するための「日本薬業研修センター」(仮称)の設立まで、提案は相当に幅広く踏み込んだ内容となった。互いに利害関係が生じるであろう団体同士でまとめた案としては評価できる。
また今年5月、全国12カ所の専門学校が、登録販売者認定試験対策としてカリキュラム、教材、模擬試験、販売研修、業界連携を通じて、登録販売者の資質向上を図るための人材育成を検討する「医薬品販売教育施設協議会」を設立した。今後、創設される認定試験に向けて、コアカリキュラムの統一化を進めるなど、教育施設側も厚生労働省にアプローチをかけており、この動きも見逃せない。
今後、登録販売者の認定試験については、都道府県によって格差が生じないように、標準的なレベルを維持するための方策が検討されることになる。その性質上、公開の場で検討されるべき案件であろうが、高橋直人医薬食品局長も消費者を交えて、オープンに議論する方針を表明しており、認定試験について適切な運用方法が構築されることを期待する。
ただ注意すべきは、試験の難易度を高めれば全てが解決するものではなく、認定試験そのものが目的ではない。医薬品を取り扱う業態として、法律に定められた要件を満たすだけでなく、専門家としてプラスαの工夫を行い、地域の実情に応じた質の高い情報提供サービスを通じて消費者の信頼を獲得していくことが、何よりも重要である。
現行制度見直しの背景には、一般用医薬品の適正かつ安全な使用を確保したいとの思いがあった。そのためリスクの程度に応じて医薬品を分類し、情報提供にメリハリをつけて、実効性を高める仕組みがつくられたわけだ。
“新資格”はあくまで、資質があることを裏付けたに過ぎない。「仏作って魂入れず」では本末転倒だ。登録販売者は果たすべき役割をしっかり自覚し、研鑽を積み重ねることが不可欠である。それが医薬品販売の専門家として社会から認知され、地位を確立することにつながるだろう。