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一般用医薬品を生業とする薬業5団体で構成される薬業連絡会(全日本薬種商協会、日本チェーンドラッグストア協会、日本置き薬協会、日本大衆薬工業協会、日本医薬品卸業連合会大衆薬卸協議会)は13日、改正薬事法の効果的な運用実現に向けて業界関係者、学識経験者、法律専門家などで組織した「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」の検討結果を報告書にまとめ発表した。一般用医薬品のリスク別分類と情報提供体制の充実、新たな販売資格者の構築と資質向上などを柱とした改正薬事法が、真に生活者の視点で運用されるように、実施者である業界自らが討議を行い提案したもの。効果的・効率的な医薬品提供体制に向けて製配販の横断的な協力体制構築、販売専門家の継続的な資質向上のために統一の研修センター設立が必要としたほか、新たな業界団体として「日本薬業協議会」(仮称)の発足も求めている。報告書を受けた薬業連絡会は11月頃をメドに、5団体以外にも呼びかけて、協議会設立へ動き出す考えだ。
改正薬事法の成立後、薬業5団体は業界としての襟を正した、関係団体のエゴにとらわれない自主基準づくりが必要と判断、任意組織の薬業連絡会を結成すると同時に、様々な分野の専門家で構成する「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」を立ち上げ、4月から10回にわたり討議を行ってきた。改正薬事法の運用により生活者がメリットを享受するには、生活者に最も近い実施者が詳細を提案することが望ましいとし、業界が今後努力すべき方向性や内容についての意見を報告書としてまとめた。
この中では生活者にリスク別分類の表示や内容を明示すると共に、商品の選択・購入においても、適切な表示や陳列を明確にすることが必要として、店内表示や外箱表示、陳列方法なども例示した。
新資格者(登録販売者)については、20歳以上で203年の実務経験が必要とし、国民に分かりやすいように、業界内の一般名称「医薬品販売管理師」(略称販売管理師)を使用することが望ましいとした。さらに登録販売者の試験を受ける前の実務経験実施者についても、「医薬品販売師」(販売師)という一般名称の使用を提言している。
登録販売者の資質向上に向けては、業界全体で横断的かつ統一的に管理・運営できる教育機関として「日本薬業研修センター」(仮称)の設置を提案。さらに改正薬事法が適切かつ効果的、効率的に運用されるための協議及び活動を行い、民間主導で内容や水準を高めていくため、「日本薬業協議会」(仮称)の発足を強く求めた。
報告書をまとめた検討委員会の川島光太郎委員長(前帝京大学薬学部長)は、「非常に熱心な議論がなされ、最終合意に至った。これまで行政指導の下で業界が動いてきた面が強いが、今回は業界が自ら議論し、生活者の視点に立った販売体制の構築を目指したものだ」と趣旨を説明した上で、「より良い実効ある制度に向けて、報告書の内容をぜひ行政施策に反映していただきたい。研修センター設立など非常に困難を伴うであろう事項も提案したが、ぜひ業界全体が結束して実現を目指してもらいたい」と述べた。
「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」報告書の概要 |
改正薬事法が有意義な制度として継続的に機能するために何が必要かを議論するために、一般用医薬品販売に関わる業界5団体による薬業連絡会では、多くの有識者の参加を得て「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」を設置して4月以降、議論を続けてきたが、その報告書が13日に発表された。報告書の主なダイジェストを以下にまとめた。 <リスク別医薬品の「管理」と「情報提供」の明確化> [1]「管理」と「情報提供」の法律的位置づけ 「管理」は現法7・8条で、「情報提供」は現法77条3の4で分けられているにもかかわらず、局長通知で「実地に管理」が「常駐及び情報提供」と解釈され、薬事法の運用が混乱した。 深夜・早朝の「管理」に関して、かつて厚生労働省の「深夜・早朝における医薬品の供給確保のあり方について」の報告書(2004年1月)に『深夜・早朝以外の時間帯において、薬剤師の常時配置による購入者等への服薬指導、医薬品等の管理、従業員等の監視など、適正な実地管理が行われている場合には、その効果が深夜・早朝にも及び得ると考えられる』と解釈されていることから、通常勤務において管理業務がきちんと行われていれば、他の時間帯にも管理が及ぶということが確認された。これによって管理者がいない時間帯でも、情報提供者がいれば販売できることになる。 また、これまで「実地に管理」の「実地」とは何を指すのかが不明確であったが、検討委員会では「実地に」は、「現場で実際に」という意味として解釈することが確認された。この管理者は「現場で実際に管理を行う者」であるので、正社員及びそれに準ずる社員であるべきである。 販売に当たっては、薬剤師または登録販売者が常駐のもとで、レジ、陳列、POP作成等の販売補助を一般従業員でも行えることが確認された。こうした内容は厚生労働省令で明確にしておくべきである。 リスク別医薬品の管理と情報提供体制だが、改正薬事法の第28条では『店舗を実地に管理する者は、薬剤師または登録販売者』と定められている。製薬企業の製剤技術が進歩している現在、一般用医薬品の販売に限定される店舗販売業においては、第1類医薬品の管理においても、薬剤師でなければならない正当な理由は見当たらない。つまり医薬品のリスクの程度の差によって、管理内容は変わらないとみなすことができる。 すなわち薬剤師の専門性が必要とされるのは、第1類医薬品の販売時における情報提供、相談応需であり、管理については第1類医薬品であっても登録販売者で可能である。この場合、情報提供、相談応需を伴う第1類医薬品の販売においては薬剤師を雇用することによって、その雇用している時間帯でのみ可能となる。 改正薬事法28条の3項には「店舗管理者は、その店舗以外の場所で業として店舗の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない。ただし、その店舗の所在地の都道府県の許可を受けたときは、この限りではない」と明文化されているが、薬剤師が管理者の場合、当該薬剤師は休日・夜間調剤等、地域の救急医療への貢献など、極めて社会性の高い業務を行う場合については、一定の範囲内において当該店舗以外の店舗、または施設等での業務を行うことができる方向で登録販売者も含めて検討すべきである。ただし二重管理者登録は認めないものとする。 <リスク別医薬品の提供体制整備> 店舗販売業及び配置販売業において、それぞれに表示及び掲示する内容のサイズ、掲示(表示)場所、表示内容等に一定の基準を設けて、購入者が一目でリスクや購入方法が判断でき、混乱せずに的確に医薬品を選択、購入、使用できる体制を構築する。 検討委員会では第1類から第3類医薬品までの区分を、子どもから高齢者、視覚障害者まで一定の区分ができるようにすべきであるとの意見があったが、その必要性は認められるものの、パッケージの一部(上部)を色分けなどすることによって高齢者に対応し、視覚障害者に対しては企業努力の範囲にするのが現実的である。 医薬品のリスクに応じた外箱表示については経済的論議も呼ぶところだが、リスク区分表示を明確にするために別図(省略)を一つの案として示したので参考にしていただきたい。これによって店舗内のリスク区分陳列、更に配置薬にも対応できる並べ方が可能になる。 陳列等に関する改正薬事法では、新たに「医薬品を他の物と区別して貯蔵し、また陳列しなければならない」のほか、「リスクごとに陳列しなければならない」ことが追加された。このリスクごとに陳列する具体的な内容については厚生労働省令で定めることになっているが、この点は明確にしておく必要がある。都道府県による監視指導に大きなズレが生じることになるため、具体的な省令化を検討すべきである。 消費者は知る権利を有しており、第1類医薬品であっても、その情報は開示されなければならない。購入者にとって、医薬品の情報開示として最も有効なのは、パッケージそのものを手にとって見ることができることであり、考えられる陳列方法としては別図(省略)のように、パッケージにリスク分類を分かりやすく表示し、それぞれ第1類から第3類ごとにフェーシング単位で陳列することである。ただし第1類医薬品については、あくまで空箱陳列であり、購入に当たってはカウンターの薬剤師から情報を受けなければ購入できないようにしておく必要がある。 売り場レイアウトだが、1000m2未満の店舗は医薬品売り場の中に90cm以上の医薬品説明カウンターを置き、1000m2を超える店舗は180cm以上の説明カウンターを設置する。1000m2を超える店舗については、医薬品説明カウンターに医薬品専用レジを設置する。この店舗の場合、医薬品をオープン(集中)レジで精算させる場合はオープンレジ側にも説明カウンター及び専門家の配置が必要になる。第2類医薬品成分のうち、アスタリスク(*)付き医薬品は法律による分類はないが、購入者への情報提供体制がとれるように、説明カウンターより7m2以内に陳列する。 また現在、薬事・食品衛生審議会の委員には薬剤師の代表が委嘱されているが、今後は登録販売者もその代表者を1名加えていただくよう強く要望する。 リスク別分類の指定または変更時に、医薬品販売者の意見を反映するのは極めて現実的で実態の即したものになると思われる。 <登録販売者に求められる資質と確認方法> 厚生労働省が求める資質、および改正薬事法が求める「店舗管理者の義務」「情報提供」「相談応需」副作用等の報告」に基づき作成したカリキュラムの骨子を元にして、資質確認のための試験内容を検討する。 資質確認の試験においては、知識の確認は一般用医薬品販売に必要な知識に集約し、現場で必要な、あるいは役立つ知識にすべきである。年間の合格者数は制限せず、一定の知識水準を有したと確認された者はすべて合格とする。試験の範囲、難易度は全国的に標準化し、都道府県による格差を最小限にするため、当初は厚生労働省主導で、そのカリキュラム・認定試験を作成していただくことを要望する。 登録販売者の受験資格は、実務経験を原則2年または3年以上経た者、20歳以上の者、旧制中学・高校または高校と同等以上の学校を卒業した者、外国の高校に相当する学校を卒業した者とする。 実務経験については、旧制中学・高校または高校以上の学校を卒業した後、店舗販売業基礎教育講座または配置販売業基礎教育講座を受講し、実務経験実施者として試験に合格した日、またはヘルスケアアドバイザー認定取得日より、実務経験の必要年数を経て、登録販売者の受験資格とする(実務経験年数は各団体または統一機関が証明する)。実務経験実施中の者に対しては、業界統一の研修センター(仮称)を設置し、体系的な受験サポートとして登録販売者の受験講座を実施する。 <登録販売者における業界対応> [1]登録販売者の一般名称 国民から一般用医薬品の情報提供者、販売者であることを明確に判断できるよう、業界内の一般名称「医薬品販売管理師」(略称・販売管理師)を使用する。また実務経験の実施者も一般販売員と区別するため、業界内の一般名称として「医薬品販売師」(略称・販売師)を使用する。 [2]登録販売者育成・強化のための所属組織 登録販売者の全国的な資格者の団体は、社団法人全日本薬種商協会に置く。他の団体に所属する登録販売者も、ここに加入する。 [3]登録販売者の継続的研修(生涯教育)の義務化 改正薬事法で求められている資質向上と、その資質の継続性を担保するために、効率的で実効性のある継続教育を実施し、一定レベルの資質を確保できる仕組みを構築する。 [4]既存配置販売業の対応 既存の配置販売業者に登録販売者の資格取得を促進すると共に、一定期間の目標年数を設定して、都道府県ごとの区域管理者を置くように努める。 <資質向上のための研修センター構想(案)> 業界全体として横断的かつ統一的に管理・運営できる教育機関として「日本薬業研修センター(機構、仮称)を設置する。 センターは資質向上のため継続的教育や研修を受けている人たちを認定し、証明書を発行する。またセンターは単に研修を実施し、研修者の厳正な登録・管理を行うのみでなく、法律や医薬品情報の管理およびその迅速な提供、また販売に伴って発生する事故・トラブルのサポートなどについても対応できる機能を持たせる。 改正薬事法では国や都道府県、関係機関及び関係団体が連携し、一般用医薬品の販売に従事する者の資質向上に努めることが明記されている。継続的研修については受講の対象を薬剤師、登録販売者、配置販売員、実務経験従事者とし、効率的で実効性がある運営を行うためにも、都道府県ごとに全国各地で実施する。 <登録販売者の運用における課題> [1]登録販売者の説明の範囲 登録販売者の説明できる範囲を明確にする(医師法等との関連)。受診勧奨の内容や方法についてマニュアル化し、努力義務とすべきである。情報提供のミニマムスタンダードをマニュアル化し、それ以上の情報提供は努力義務とする必要がある。 [2]電話及びネットによる医薬品販売 本来、一般用医薬品は対面販売が原則であり、改正薬事法における店舗販売業、配置販売業もそれを担保している。このことから通信販売およびネット販売は原則として医薬品の販売は認められない。ただし、これまでの状況や検討部会報告等からみて第3類医薬品に限定して認める場合は、整合性ある論拠に基づく省令化を行うべきである。 [3]登録販売者であることの証明 登録販売者は都道府県知事の登録のため、全国各地に移動した際に登録販売者の身分を証明しにくくなることが予測される。そのために登録販売者が身分や研修履歴を証明したい場合には、全国レベルで登録し、迅速に証明書等を発行できる業界の管理機関の設置が必要である。 [4]薬科大学・薬学部卒業生で薬剤師国試受験資格がない人への措置 薬学教育6年制に伴う4年制学部卒業者(既存、今後ともに)に対して、一定の条件のもとに登録販売者の資格は取得できるようにすべきである。 |