第一三共は、第一製薬子会社の非医薬品事業の2社を売却すると発表した。売却額は非開示だが、2社で500億円規模。一つは癌の画像診断などに用いる放射性医薬品を扱う第一ラジオアイソトープ研究所(DRL)で富士フイルムの子会社に、もう1社は臨床検査薬などを扱う第一化学薬品は積水化学の子会社になる。これは第一三共による医薬品事業への経営資源の集中の一環。
いずれも11日に株式の譲渡(譲受)契約を締結、10月2日に第一製薬から両子会社の株式がそれぞれの社に譲渡される予定。
検査、診断分野は将来的には遺伝子や疾患マーカーを検出し、個々の患者に合った薬物治療に結びつけられ、医薬事業と一体化する可能性も指摘されている。その点、2社の売却を決めた第一三共は、「社のメインターゲットは治療薬、予防薬の新薬を生んでいくことにある。そこに経営資源を特化しないといけない。今回の2社については、より成長の図れるパートナーと提携することが得策と判断した」と説明している。
富士フイルムは、DRLを200億円規模で買収する。需要が高まる検査の効率化や身体に負担の少ない検査・治療で、放射性医薬品を用いた核医学検査の役割は重要と判断。エックス線画像診断システムを中心とした事業から、核医学画像診断薬、放射性医薬品にも拡大させる。
同社は「メディカル・ライフサイエンス事業」を重点事業として成長戦略に位置づけている。同事業売上高は2300億円(2005年度)で、そこに172億円(同)のDRLが加わることになる。同事業では08年度までに3000億円規模にする成長戦略を描いており、今回の買収もその戦略の一環として実施された。
積水化学は、第一化学を約300億円で買収する。採血管や糖尿病検査用カラムなどの検査用具に強く、世界トップシェアの製品も持つ。このメディカル関連事業は戦略分野と位置づけられているが、他の戦略分野に比べ、もう一段の強化が迫られていた。
そこでインフルエンザ検査薬など簡易迅速(POC)検査、コレステロール検査薬など生活習慣病検査に強い第一化学薬品の企画開発力を融合し、グローバル展開を図りたい考え。両社合わせた売上高合計(同)は343億円で、検査薬を主力とする企業の中では、みらか、シスメックス、アークレイに続き4位となるという。メディカル関連事業では08年度には420億円、10年度には500億円までの成長を見込んでいる。