宮城厚生協会長町病院では、後発(GE)医薬品の採用に当たって採用基準を作成すると共に、医師や患者への説明を薬剤部が担うことによって、次第にGE薬の採用が増加している。また、仙台逓信病院では、GE採用基準の作成で取り引き相手を10社程度に絞ったほか、カルテ情報を利用して、不足がちな臨床評価情報の収集・活用を行っている。しかし両院とも処方せんに“変更可”のチェックを行っておらず、地域で不特定のGE薬が使われることを敬遠する傾向も見られている。9、10の両日に仙台市で開かれた第57回東北薬剤師会連合大会のパネルディスカッションでは、そうしたGE薬処方の現状が報告された。
パネルは「後発医薬品変更処方による現状と対応について考える」というテーマで行われた。
医師の立場からは塚本二郎氏(宮城厚生協会長町病院小児科)が、現状を分析した。
塚本氏によると、長町病院では90年代半ば以降、患者負担の軽減、薬剤費削減を念頭にGE薬の採用が進み、後発品の採用比率は注射で約20%、外用で約16%、内服で約10%になっているという。「現在では、医師もGE使用に対する後ろめたさがなくなり、患者負担の軽減など意義を感じている」と、医師の認識が変化してきたとする一方、「(MRの)顔が見えず、情報が少ない。銘柄を覚えたり、患者に説明するなど、変更に伴う煩わしさがある」と課題も述べた。
医師が個別に特定のGE薬採用を申請することはないとのことだが、GE採用による利点を総合的に考慮し、宮城民医連として「後発品品評価統一様式」を作成。これに基づき事務局(薬剤部)が採用品を選定して説明資料を作成、薬事委員会で議論を重ねることによって、次第に採用が進んできたと説明した。
さらに「GE薬は事務局採用であり、医師や患者への情報提供・説明も薬剤師が行う」としており、GEに関する薬剤師の役割が重視されていることを明らかにした。ただ、院外処方せんには変更可のチェックをしていないとしており、院内ルールが及ばないGE薬の使用には躊躇もあるようだ。
病院薬剤師の立場からは高橋将喜氏(仙台逓信病院薬剤部長)が発言した。高橋氏によると、仙台逓信病院がGE薬を採用して6年が経過したが、特段の問題は起きておらず、採用品については、先発品との間に差異は認められなかったとした。
同院は院外処方せん発行率が45%。採用薬856品目のうちGE薬は97品目で、特に内服薬の採用率が18%で高いという。GE薬の採用は、▽生物学的同等性試験に適合▽安定供給が可能▽購入金額の多い薬剤から採用――などの「採用原則」を満たし、かつ適切な情報提供を継続し得るなど「メーカー選択基準」に適合することを基準にしている。この結果、取引GE薬メーカーは10社以内に絞られた。
3年前からは東北大薬学部と共同で、カルテ情報を利用したGE薬の臨床的評価を実施。GE薬への切り替えによる経済効果、薬効・安全性に関する評価結果の一部が提示された。例えば、リポバスをリポオフへ切り替えたところ、「患者負担額の減少が服薬コンプライアンスを改善させ、総コレステロール値にも影響(有意に低下)を与えた可能性が考えられる」とした。
これらを受けて高橋氏は「採用品に関しては、品質・効果に問題はない。院外処方でも、できるだけ病院の採用品を処方する。同一エリアの保険薬局では、できるだけ当院と同一のGE薬を使用してほしい」と協力を求めた。