2005年の院内感染サーベイランス事業概要がまとまった。サーベイランス報告は、[1]集中治療(ICU)[2]検査[3]全入院[4]外科手術部位感染(SSI)[5]新生児集中治療(NICU)――の5部門に分けてまとめられた。報告によると、全体的な傾向は従来と大きな違いがなく、比較的安定した状況にあった。
ICU部門では、集中治療室に入室し、▽人工呼吸器などのディバイスを装着している患者の院内感染率(各ディバイスの延べ装着日数に対する感染患者数の割合)は、肺炎発生率が0・75%▽血管留置カテーテル装着患者の血流感染が0・07%▽尿路カテーテル装着患者の尿路感染症が0・03%――であった。
また、ICUに入室した患者の院内感染率(入室患者数に対する感染患者数の割合)をみると、全退室患者当たりでは3・7%。その内訳は人工呼吸器関連肺炎3・0%、創感染1・0%、敗血症0・5%などの順である。
ICU入室患者の平均在室日数・平均在院日数は、非感染者に比べて感染者の方が長い傾向が見られた。具体的には、ICUの平均在室日数は耐性菌感染が30・8日、感性菌感染が29・6日と1カ月程度要しているのに対し、非感染の場合は4・9日である。同様に平均在院日数も耐性菌感染が81・0日、感性菌感染が80・0日だが、非感染の患者は45・3日で退院している。
検査部門で全国の医療機関から報告された検体数は、16万9130件(血液15万2822件、髄液1万6308件)で、04年より約6000件増加した。検体から菌が分離された頻度(検体陽性率)は15・2%で、内訳は血液検体が16・1%、髄液検体が6・2%だった。全体の平均と血液検体の陽性率は、04年とほぼ同様だったが、髄液検体の陽性率は約1ポイント増加した。
血液検体総数に対する主要分離菌の頻度をみると、黄色ブドウ球菌3・45%、表皮ブドウ球菌2・49%、大腸菌2・13%――の順で、04年と同様だった。髄液検体では、表皮ブドウ球菌1・12%、黄色ブドウ球菌1・03%などが上位を占めた。
全入院患者サーベイランスでは、調査に参加した67施設で、対象となった患者は75万2925人。そのうち薬剤耐性菌により感染症を引き起こした患者は4841人で、全患者数に占める割合は0・64%だった。
耐性菌の種類別では、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染が4284人、MRSAと多剤耐性緑膿菌の混合感染が66人、MRSAとメタロβ‐ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌との混合感染が3人。そのほかPRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)感染が215人、多剤耐性緑膿菌感染が101人などとなっていた。