国内製薬企業大手4社の2009年3月期決算が、14日に出揃った。各社とも円高が大きく影響し、海外で成長を牽引してきたグローバル製品の伸びが鈍化。武田とエーザイは買収効果で増収を確保した。一方、後期開発プロジェクトの進展、買収費用の負担が重く、研究開発費の負担増が継続。エーザイを除く3社は減益に落ち込んだ。特に第一三共は、印ランバクシーの買収に伴うのれん償却費を特別損失として計上したため、大幅な赤字に転落した。各社ともグローバル化に向け、産みの苦しみが続いているが、2010年問題への対応で先行したエーザイが一歩抜け出す格好となり、明暗が分かれた。
売上高をみると、アステラスは、新製品の過活動膀胱治療剤「ベシケア」が二桁成長を達成したが、主力の免疫抑制剤「プログラフ」、排尿障害治療薬「ハルナール」が円高や後発品の影響を受け、0・7%の減収となった。
第一三共は、非医薬事業の切り離しと欧州子会社の決算期変更、「ザンダック」「コバシル」の販売権返還が影響し、4・3%の減収。医薬品事業も主力の高血圧治療剤「オルメサルタン」は8・0%と伸長したが、他のグローバル2製品が二桁の落ち込みとなったことに加え、円高も大きく影響し、0・2%の減収となった。
一方、国内トップの武田は、成長を牽引してきた国際戦略製品の2型糖尿病治療剤「ピオグリタゾン」が2・3%減となったが、買収したTAPの消化性潰瘍治療剤「プレバシド」、ミレニアムの抗癌剤「ベルケード」が売上に寄与し、11・9%増と二桁の増収で買収効果が表れた格好となった。
エーザイも円高の影響はあったものの、主力のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」が4・4%増と続伸。MGI製品も売上に大きく貢献し、6・5%の増収と堅調な業績を確保した。
各社とも海外売上が成長を牽引しており、円高のマイナス影響が大きかったが、買収効果が売上に貢献した武田、エーザイが増収を確保した。
しかし、営業利益は、エーザイを除く3社が減益となった。武田は、引き続きTAP、ミレニアム買収に伴うインプロセス研究開発費の負担が重くのしかかり、27・6%減。アステラスは、後期開発プロジェクトの進展を受けて研究開発費が大幅に増加。米アジェンシス買収に伴うのれん償却費用も影響し、9・2%減となった。
第一三共も、後期開発プロジェクトへの研究開発投資、抗血小板剤「エフィエント」の販売に向けた先行投資を積極的に行った結果、43・7%減となった。さらに、印ランバクシー買収に伴うのれん償却費を特別損失として計上したため、純損失が3695億円と大幅赤字に転落した。
一方、エーザイは、研究開発費が二桁の伸びとなったが、MGI買収に伴う会計処理のマイナス影響が解消され、大幅な増益に転じた。
09年3月期決算は、エーザイが再び増収増益の成長路線に回復した一方、武田とアステラスは減益、第一三共は赤字転落と、大型買収の影響が如実に反映された格好となった。
10年3月期は、武田を除く3社が増収予想、アステラスを除く3社が増益予想となっており、巨額の大型買収を行った3社は回復基調に転じる見通しだ。