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肝疾患に伴う掻痒症の止痒薬開発へ‐中枢性の痒みを制御

2006年09月06日 (水)

 東レは、難治性の痒みを止める薬剤として開発を進めている「TKR‐820」について、肝疾患に伴う・痒症の適応を目指して、日本たばこ産業グループと共同で開発を行うことになった。「TKR‐820」はκオピオイド作働薬で、抗ヒスタミン系薬剤では抑えられなかった痒みの伝達神経を抑制すると考えられている。開発は「できるだけ早い時期に」(東レ)国内でPIIから着手する方針で、販売は鳥居薬品が行う。

 肝疾患に伴う痒みは、炎症などを伴わずに全身性、または局所に強い痒みが起こることが特徴。透析患者に伴う痒みと並んで耐え難い症状だとされ、抗ヒスタミン剤では十分に制御できない難治性の痒みとして知られている。はっきりとした原因は明らかにされておらず、発症頻度も「分からない」(同)という。これまでの研究から、肝硬変などの胆汁うっ滞による機序が考えられているが、それだけでは説明できないことも分かってきている。

 そうした炎症を伴わない痒みの原因として、中枢性の機序が注目されている。中枢性の痒みとしては、モルヒネの硬膜外投与などによって引き起こされる痒みが知られ、オピオイド受容体の関与が示されている。実際、μオピオイド作働薬をマウス大槽内に注射すると、掻き動作が引き起こされることが認められている。また、体内にあるオピオイド濃度を測ると、透析患者で痒みの強い人ほど血液中のμオピオイド/κオピオイドの比が大きいことが分かってきている。そのため、κオピオイドの濃度を高め両オピオイドの比を是正することで痒みを抑制できるだろうと研究が進められてきた。

 「TRK‐820」は、κオピオイド受容体に選択的に結合し、活性化することで、抗ヒスタミン系薬では抑えられなかった痒みの伝達系神経を抑制すると共に、オピオイド系の痒み発症メカニズムを抑えると考えられている。そのため、既存薬では効きにくい痒みにも有効だと期待されている。

 東レなど3社は、現在PIIIにある血液透析患者での痒みに対する開発と販売でも提携している。それに続いて適応追加として開発・販売を行うことになったもので、3社は4日に契約を締結、発表した。

 東レは、透析に伴う痒みでは海外でも共同開発を進めており、米国ではバイオベンチャーの「アコロジクス・インク」と、欧州ではマルホと行っている。また、アトピー性皮膚炎伴う痒みでもマルホと日本での共同開発を進めている。



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