厚生労働省医薬食品局安全対策課は、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会に、パロキセチン塩酸塩水和物など選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)等の抗うつ剤の副作用を分析した結果を報告し、部会の議論を受け、他害行為の可能性について注意を喚起するよう、8日付で添付文書の改訂を通知した。
対象となるのは、▽パロキセチン塩酸塩水和物▽フルボキサミンマレイン酸塩▽塩酸セルトラリン▽ミルナシプラン塩酸塩--の4種類。
医薬品医療機器総合機構が、傷害等の副作用症例39件を精査。パロキセチン塩酸塩水和物とフルボキサミンマレイン酸塩について、各2件を他害行為との「因果関係が否定できない」とし、残りは「因果関係は不明」と評価した。
さらに、精査した副作用症例の多くが、躁うつ病や統合失調症のうつ病状、併存障害を有する状況で処方を受けていたことを踏まえ、こうした患者への投与は慎重に行う必要があると結論づけた。
そこで厚労省は、他害行為との関連が明らかではない症例を含めて、「早い段階で手当をすべき」(森和彦安全対策課長)と判断。添付文書の「使用上の注意」改訂を関係者に指示した。
具体的には、重要な基本的注意の項目に、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動変化、基礎疾患の悪化が現れることや、他害行為が報告されていることを盛り込むほか、リスクを家族に説明するよう求めた。
また、慎重投与の項目も見直し、パロキセチン塩酸塩水和物と塩酸セルトラリンについては、「躁病の既往歴のある患者」を「躁うつ病患者」に改めると共に、「脳の器質的障害または統合失調症の素因のある患者」と「衝動性が高い併存障害を有する患者」を追加する。ミルナシプラン塩酸塩とフルボキサミンマレイン酸塩については、新たに「衝動性が高い併存障害を有する患者」を加える。
今後も厚労省は、診療や患者・家族への適切で効果的な情報提供の内容や手段について検討することとしており、日本うつ病学会で4月から動き出した「抗うつ薬の適正使用に関する委員会」とも協力する。
なお、この日の部会に参考人として出席した同委員会の樋口輝彦委員長(国立精神・神経センター)は、「診療する側の知識や経験を増す努力が必要と認識している。抗うつ薬を使う現場では、必ずしも標準的な処方をしているとは限らない」と述べ、委員会として適正使用に関する提言をとりまとめたい考えを説明した。