文部科学省は8月29日、2007年度予算の概算要求をまとめ公表した。一般会計の要求額は5兆8039億円で、06年度当初予算に比べ6715億円、13・1%の増額である。がん対策基本法が成立したことを受け、癌の診療などに関わる医療人養成機能を強化する観点から、「癌プロフェッショナル養成プラン」を新たに立ち上げるべく40億円を要求した。また、重点4分野の一つに位置づけられているライフサイエンス関係では、研究成果を実用化する橋渡し研究推進などの新プロジェクトも含め、総額で886億8100万円を要求、今年度の699億0900万円に比べ、187億円余の大幅増額要求となった。
癌プロフェッショナル養成プランは、がん対策基本法の成立を受け、癌に特化した医療人を養成することが目的。新たな癌治療体制の構築に向け、高度な知識・技術を持つ癌専門医、癌医療に携わる看護師、薬剤師など、癌に特化した医療人の養成を行うため、[1]横断的な教育プログラムの構築と実施[2]実地修練を支援するシステムの整備――を行う大学の取り組みを支援する。
また、世界最高水準の卓越した教育研究拠点形成と大学院の抜本的強化の面からは、21世紀COEプログラムの成果を踏まえ、世界的な卓越した教育研究拠点形成をより重点的に支援するため、新たに「グローバルCOEプログラム」を立ち上げることとし、約230億円を計上した。このプログラムでは、特に若手研究者の育成と国際的な拠点形成の強化を図る方針であり、07年度は約60拠点を採択したい考えだ。
一方、ライフサイエンス分野では、「生命現象の統合的全体像の理解」を目指した研究により、生命の神秘へ迫っていくと共に、「研究成果実用化のための橋渡し」を重視し、国民への成果還元を抜本的に強化していく方針だ。
この中では新規要求として、「研究成果実用化のための橋渡し研究の推進」に30億0600万円を計上した。先端医科学研究の成果を実際の医療に活用するため、橋渡し研究の支援拠点を整備するもの。また、「ターゲットタンパク研究プログラム」を新規に立ち上げるべく、74億2500万円を要求した。基本的な生命の解明、医学・薬学等への貢献、食品・環境等の産業応用に向けて、標的となる重要な蛋白質の構造・機能解析を推進する計画だ。
イノベーションを生み出すシステムの強化という面から、産学官連携の本格化と加速に452億4500万円を要求している。産学官連携と知財戦略を、基礎研究成果からのイノベーション創出を実現する重要な手段と位置づけ、その持続的・発展的な展開に向け本格化・加速を図る。このうち新規要求としては、優れた研究成果について応用・発展性の評価分析等を実施し、切れ目なく実用化に結び付ける仕組みの構築に5億円を計上した。