日本医師会治験促進センター、日本病院薬剤師会臨床試験対策特別委員会、日本製薬工業協会、日本CRO協会の4者は、EDC(Electronic Data Capture)に関する合同調査をスタートさせる。医療機関、製薬企業、CROが共同してEDCの実態調査を行うのは初めて。医療機関約1200施設、製薬企業75社、CRO38社を対象に、Webアンケート形式で実施する。施設調査に引き続き、CRCとCRAを対象とした個人調査も行う予定だ。当面は、現在の実態把握を目的とするが、長期的にはEDCへの関心を高めていく狙いもある。
規制当局と製薬企業間で先行した臨床試験データの電子的交換は、医療機関と製薬企業、CROの間でも導入されるようになってきた。しかし実績はまだ少なく、日本のEDC導入は初期段階と言える。
また現在は、依頼者側がEDCの導入を進めている形だが、実際に運用するのは医療機関であり、立場の違いから様々なトラブルの発生も予想される。依頼者側もEDCの運用はデータマネジメント部門が中心で、現場のCRAにはほとんど浸透していないと指摘されている。
そこで医療機関、製薬企業、CROの3者に調査を実施し、問題点の把握、解決から円滑なEDCの導入を目指していく考えだ。調査は、製薬協のホームページ上に設置された専用画面にアクセスし、質問に答える方式を採用する。
医療機関に対しては、▽施設名▽病院規模▽業務内容▽治験業務に使用できるパソコンは、インターネット接続されているか▽電子カルテを導入しているか▽SDV(原資料閲覧)を行う場所にインターネット接続端末はあるか▽EDCの実施経験はあるか▽今後、EDCによる治験を引き受けたいか▽今後、EDCは治験を実施する上で必要と思うか――など100項目の質問が用意された。
製薬企業からは、▽所属▽英語によるEDCシステムを検討しているか▽EDCに関する教育・トレーニングの制度はあるか▽CDISC(世界標準データ交換仕様コンソーシアム)への対応を検討しているか――など66項目を聞く。
当面は、広く施設調査を進め、現時点におけるEDCの実態を把握する。引き続いてCRCとCRAを対象にした個人調査を実施し、年内には問題点の抽出、解決方法の解析までを終えたい考えだ。調査結果は中間報告の形で、10月の第6回CRCと臨床試験のあり方を考える会議、11月の第27回日本臨床薬理学会年会で発表する予定にしている。
調査は、EDCに関する基礎データとなるもので、今後の対応を決める上でも重要な意味を持つ。特に国際共同治験を見据えると、EDCの導入が必須となる可能性が極めて高いと考えられる。また、データフォーマットの標準化に向け、米国で2010年の完成を目指して活動を行っているCDISCの動きも注目されている。
そうした背景から、今回スタートする調査がきっかけとなって、EDCに対する関心が高まることも期待されている。秋には東京で、CRCとCRA向けのセミナー開催も決まるなど、EDC導入へ機運が高まりつつある。