厚生労働省の「未承認薬使用問題検討会議」が開かれ、欧米では承認済みだが、国内では未承認の医薬品のうち、6成分に関するワーキンググループ(WG)の報告を了承した。特にレナリドミド、ニチシノン、アルグルコシダーゼアルファの3品目に関しては、早期の開発、承認を積極的に進めるべきとの意見であった。
今回、WGから報告されたのは次の6品目。
[1]ポサコナゾール:効能効果=侵襲性真菌感染症、EUで2005年10月25日に承認
[2]アバタセプト:中等度・重度の活動性関節リウマチ、米国で05年12月28日に承認
[3]レナリドミド:骨髄異形成症候群(MDS)による貧血、米国で05年12月28日に承認
[4]コニバプタン:低ナトリウム血症、米国で05年12月29日に承認
[5]ニチシノン:遺伝性高チロシン血症I型(HT”1)、米で02年、EUで05年に承認、学会から検討の要望が出されている
[6]アルグルコシダーゼアルファ:糖原病II型(ポンペ病)、EUで06年3月29日に承認、患者団体から検討の要望が出されている
ポサコナゾールは、国内でキャンディン系抗真菌薬であるミカファンギンが上市されていること、EUでもキャンディン系抗真菌薬を対照とした比較臨床試験が実施される予定であることを踏まえ、比較試験の状況を見守りながらも、重篤な真菌感染症に対する薬剤の選択肢を増やすという観点から、開発が検討されることが適切とされた。
アバタセプトは、抗TNFα治療薬で効果不十分の活動性関節リウマチに対して臨床的な期待は高いものの、安全性に関しては十分な検討が必要との評価で、国内外のデータの厳密な評価を通じた有効性と安全性の確認が必要とした。現在、国内で承認申請に向けて治験が進行していることから、当面はその治験を見守ることが適当とした。
レナリドミドは、標準治療が確立していないMDSの患者に対し、生活の質改善を含め多大な利益をもたらすと期待され、わが国でも早期の治験が望まれるとした。ただし、サリドマイドと構造が類似しているため、妊婦及び妊娠可能な女性への投与は禁忌であり、特別に制限されたプログラムでのみ使用可能なことから、日本でも安全性に注意して治験を行うべきとした。
コニバプタンは、日本において同種同効品である塩酸モザバプタン(経口剤)が近く承認される見込みだが、同剤は注射剤で意識障害などのある患者にも投与できる利点があることから、有効性、安全性を注意深く検討しながら、開発を進めるべきとした。
ニチシノンは教科書的にも、HT”1に対する第一選択の非常の有効な治療法になっている。現在、対象となる国内症例が一例と極端に少ないことを考慮し、欧米での臨床試験データで承認申請を認め、承認後に長期にわたる製造販売後調査などで国内情報を収集すべきとした。特に、このように企業が収益を得にくい極めて稀な疾患を対象とする薬剤の開発では、海外の小企業が日本に申請できる対策を考慮すべきことも指摘された。
アルグルコシダーゼアルファは、これまで有効な治療法がなかったポンペ病の進行を抑える唯一の治療法であり、臨床的重要性の極めて高い希少疾病用医薬品であることから、日本人患者のデータを含む欧米での臨床試験データをもって申請を認め、承認後に長期間の製造販売後調査などにより、可能な限り国内情報を収集することが望ましいとした。